必要なのは「コンサルタント兼エンジニア」を担う⼈材

⽇本のエンジニアへの想い

必要なのは「コンサルタント兼エンジニア」を担う⼈材

クラウドソリューション開発 CTO兼CISO
梁⾏秀

クラウドソリューション開発 CTO兼CISO梁行秀

「キャリコネ」のウェブメディア事業のイメージが強いグローバルウェイですが、創業当時は法人向けクラウドソリューション開発事業からのスタートでした。その法人向けクラウドソリューション開発事業を統括するCTO兼CISOの梁 行秀が、今後のビジョンを語ります。

既存データをつなぎ、フロントとバックエンド双方からDXサイクルを回す

株式会社グローバルウェイ(以下、グローバルウェイ)の法人向けクラウドソリューション開発事業には「セールスフォース事業」と「プラットフォーム事業」を運営する2つの事業本部があります。どちらも、企業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の実現を支援している事業ですが、それぞれの事業は導入の出発点が異なっているという違いがあります。
 
セールスフォース事業では、企業が提供するサービスや商品と顧客との接点であるフロント部分、つまりエンドユーザー側のタッチポイント部分を主に担っています。基本の要件や新しいアイデアをセールスフォースを使いながら開発し、気になるところも修正する。このサイクルを繰り返してDXを推進する「顧客体験変革型」のスタイルがセールスフォース事業の特徴です。

それに対して、プラットフォーム事業は「プラットフォーム変革型」と呼び、事業の根幹となる基幹システムや社内システムなどバックエンドの部分を構築しています。企業では各部門、グループごとにさまざまなデータをそれぞれの方法で保持していますが、多くの企業は、それらのデータを社内連携できていないために最大限活用できていません。

プラットフォーム事業では、これらのデータをつないで情報を価値あるものに変換し、さらに自動化していくことで新たな価値を提供するデジタルプラットフォームを開発していきます。

顧客の多くからは、DXの実現をエンドユーザー側のフロント部分か、バックエンド部分かどちらかの課題としてご相談いただきますが、結果的には両方を繰り返し回しながら相互補完している状況だと思います。

そんな中でセールスフォース事業の需要が伸びている理由のひとつとして、データ統合プラットフォームを提供するMuleSoftやTalendなどの業務アプリケーション連携ツールの存在が大きいのではないかと考えます。MuleSoftやTalendは、既存のレガシーシステムに存在するデータを、セールスフォースとスムーズに連携させるミドルウェアです。

グローバルウェイは、創業当時から、セールスフォースを始めとするさまざまなクラウドソリューションを提供する企業とアライアンスパートナーとなっています。そして既存データを「どのように取り出して、どのようにつなげていくのか」に関するノウハウを蓄積してきたという強みがあります。その積み重ねられた資産があるからこそ、さまざまな課題を持った顧客のニーズにお応えできるのです。

法人向けクラウドソリューション開発事業におけるグローバルウェイの可能性

グローバルウェイは第二創業期を迎え、2021年4月に「“人”と“技術”を新しい時代のために」という新たな経営理念を策定し、更なる事業成長を実現するため企業文化の一新を推し進めています。なお、経営理念の中で捉えている“人”とは顧客へ価値を提供する“人材”を指します。

たとえば、顧客からの依頼で「レガシーなシステムから、モダンなシステムに切り替え生まれ変わりたい」と相談があったとします。そのとき、既存システムからデータを引き出し、新しいシステムを構築して提供できれば、ご要望を叶えることはできるかもしれません。もちろんSIerとしては、0から1を生み出す最初の難しいところを私たちでやり切りますが、システムを構築して終わりではありません。

その後も顧客のビジネスは続いていくので、顧客に寄り添ってできあがったシステムを“人”が守りながら、必要に応じてバージョンアップやメンテナンスを繰り返していく。そして再び新しいシステムが必要になったら、グローバルウェイがつくり上げることで “人”と“技術”の両方を提供していく。そんな関係が理想だと考えています。

私たちの願いは、システムと共に“人”が顧客と並走しながら支援し続けていくことです。“技術”を利用しながら、顧客とのリレーションの中で未来に向けて互いのミッションを達成するようなイメージですね。

ただし、これは綺麗事だけでは済みません。とくに従来の基幹システムを扱う場合、「開けてはいけないパンドラの箱」のように誰も内容を知らない、設計書がないケースも少なくありません。

そんな誰もやりたがらないような「パンドラの箱」を開けていく作業も、臆することなく開けられる技術者がグローバルウェイには多くいるので、理想を実現できる自信があります。もちろん、過去には失敗もあります。

しかし、失敗してきたからこそ知の資産として蓄積されたものも少なくありません。レガシーなシステム構築のプロセスに詳しいからこそ、私たちはどこにリスクが潜んでいるのかが分かります。

だからこそ今まで顧客が積み上げてきたデータや情報を無駄にすることなく、新しいシステムのプロセスで価値を提供することができるんです。

難しい案件だからこそ、顧客ビジネスに大きなインパクトを与えられる

以前、法人向けクラウドソリューション開発事業の具体的なプロジェクトとして、フィールドサービスを提供している企業でDXを実現すべく、セールスフォースの導入を支援したことがあります。

当時日本ではほとんど実績がなかったセールスフォースのField Service Lightningというソリューションで、既存の基幹システムで別々に管理されていた顧客情報、問合せ情報、製品の在庫状況、マニュアルなどのデータを連携させ、セールスフォースで一元的に管理するシステムを構築しました。

そして、エンドユーザーから各営業所に「機器が故障した」という問合せが入ったら、現場の近くにいる営業さんに「ここへ修理に行ってください」といった作業員のディスパッチまで行いました。

一般的なシステム開発案件であれば導入まで3カ月程度の案件が多いのですが、担当していた顧客企業は規模が大きく、営業所が日本国内に多数あり、人材を多く抱えていたので、導入まで約1年間かかりました。

また、グローバル展開する電機メーカーを担当した際は、すでに使われていたエンドユーザー向けチャットツールなどのCRM基盤をセールスフォースに切り替えるお手伝いをしました。

この企業は問合せの電話やメール、Web、チャットなど、各チャネルで異なるシステムを使っていたため連携が取れず、非常に効率が悪い状況でした。それを一気にセールスフォースのサービスクラウドへ切り替えました。こちらは要件定義からシステムリリースまで約6カ月かかっています。

「何もない、どうしよう」という状態からスタートする案件も多々ありますが、最終的に成功に導ける理由として、パートナーとの良好な関係性があると考えています。定期的にミーティングを実施し、セールスフォースが何を注視しているのか、また私たちが今どんなことをしているのかという情報交換をしています。

直近では、BtoB企業がレガシーな顧客管理システムからデータを活用し、セールスフォースでECサイトをつくりたいという案件が多くなっています。多くの顧客を抱える大企業では保有するデータが大量にあり、さらに各データが複雑に絡みあっています。

そういった場合はリスクが大きいので、SIerも受注しない場合が多い一方、私たちは、顧客のビジネスに大きなインパクトを与えて、成長を一緒に味わうためにも、積極的にチャレンジしていきたいと考えています。

顧客の皆様と長い関係を築けるのは、グローバルウェイがそういった難しい案件にこそ強みを発揮できるからと考えています。  

日本の未来に感じる危機感。エンジニアの地位向上、育成が私たちの使命

法人向けクラウドソリューション開発事業の今後の成長における課題であり、日本経済全体の課題ともいえるのがエンジニア不足です。このままエンジニアを育成できなければ、世界で活躍する企業の成長スピードについていけなくなってしまうことは目に見えています。

エンジニア育成に力を入れて“プログラムがかけて、話もできて、技術を活用し社会変革できる人材”を育てていかなければいけません。エンジニアという肩書の人は増えてきているとは思います。しかし、「プログラミングをしないエンジニア」が多くなってきているように感じていて、それではエンジニアとしてさらに上のステージに行くことは難しいと思っています。

ITの世界は、日々拡張し続けています。技術は平等に人に与えられていきますので、オープンソースで世界中の人に晒されて、ときには批判され、ときには他人に改修されるということもあります。

エンジニアは、そうした開かれた世界の中で切磋琢磨するからこそ成長するのであり、閉じた世界の中でひとり黙々と技術を磨こうとしても、本当の意味で生き抜くことはできません。一部の産業でしか通用しないプログラムをつくれるよりも、多様な産業に横通しで通用するような技術を身に着けることの方が大切です。テクノロジーを通じて、さまざまなものを変えていくことができます。

そういう力を身につけないとITの世界のスピード感についていけなくなると思っているのですが、私はその点において、日本のエンジニアの現状に課題意識を持っています。

これは面接の際にもよく伝えていますが、将来的に日本のエンジニアの地位を上げることが私の使命かつ今後やりたいことです。たとえば、アメリカでは医者・弁護士・エンジニアが「ありがとう」といわれるような職業ですが、日本のエンジニアは、労働環境が過酷な“3K”のイメージが強いです。しかし本来、エンジニアはすばらしい職業なんです。

今後は会社が担う業務の大部分が自動化される中、最終的には人の命に関わるような難しい領域が残っていくのではないでしょうか。難しいプロジェクトにエンジニアとして関わっていくことは、華やかではないかもしれませんが、社会的意義のあるものです。

2021年現在、グローバルウェイは、ヘルスケアや通信といった難易度の高いインフラ産業にも携わり、サポートしています。今後は、当社の事業本部をさらに拡大し人を教育して育てることが必須になります。次世代のエンジニアたちが次のステージへ行けるように、しっかりとサポートすることも、われわれが担うべき役割です。